さっとん調査団

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なるほど!近年の経営環境にはそんなにあてはまらんよな。という事が理解できる。(第2章 SCP理論をベースにした戦略フレームワーク)

前回に引き続き「世界標準の経営理論」第2章のまとめ。

前章ではポーターが発展させたSCP理論の根本(要は完全競争状態からあらゆる手段を使い逃れれば収益性は上がるということ)を説明したが、第2章「SCP理論をベースにした戦略フレームワーク」では、じゃー、何を意識すればいいの?という事を端的に知ることができるフレームワークの解説・それらをどの様に捉えるべきかの記載がある。また、後半では現代でもこれらフレームワーク、理論について一定の有効性はあるものの、理論の背景・前提(市場は「安定」していて「均衡状態に向かう」ということ。また人間の認知を意識していないこと)を理解していると如何に近代のビジネス環境とずれてくるのかが解説されている。

 

どうぞよしなに、ご参考まで。

SCPフレームワーク1:ファイブフォース

よくあるフレームワーク。以下が指標。

フォース1:潜在的な新規参入企業(force of potential entrants)

フォース2:競合関係(force of rivalry)

フォース3:顧客交渉力(force of buyer)

フォース4:売り手の交渉力(force of supplier)

フォース5:代替製品の存在(force of substitues)

 

ポイントとして、これらのフォースが強くなると完全競争状態に近づくことになる。そのため独占・寡占を目指すためにこれらのフォースを弱める動きが必要。

 

面白い考え方として、この指標が将来予測にも利用できる。

例えば、ITの進展→製品・サービスの比較が容易となる→顧客交渉力の向上につながる。IT投資が重要→参入障壁が大きくなる。

 

SCPフレームワーク2:戦略グループ

同じ業界のなかでも、自社がどの様な企業グループに属するかを意識し、如何に完全競争状況から逃れるかを考える。

SCPフレームワーク3:ジェネリック戦略

大きく分けると「コスト主導戦略(cost leadership strategy)」、「差別化戦略(differentiation strategy)」

どちらを選択すべきか?→よほどの事がない限り後者「差別化戦略」に注力した方が良い。

差別化できると価格勝負を避けられる(フォース2が弱まる)。また、差別化によりロイヤルティを持った顧客は他社製品、代替製品に移りにくくなる(フォース3,5が弱まる)。

よほどの事とは、「その企業が圧倒的なコスト優位を持って市場シェアを大きく取れる場合」である。こうなると独占の方向に進む。

これで成功している例としてはウォールマート。

巨大な流通・ITシステムにより「規模の経済」を実現、参入障壁を高めている。また、地方を中心に出店し大手ライバル企業と異なった戦略グループで低価格戦略によりシェアを取得。コスト主導戦略はコストだけではなくその他の戦略と緻密に整合性がとれていないと成功しない。

 

両立はできるか?→かなり難しい。

サムスンの例。半導体業界では、18−24ヶ月で半導体の集積度が倍増するというムーアの法則が前提にあり、半導体の新製品を定期的に作っていく必要がある。

新製品に対しては先行投資を積極的に行い、どこよりも早く新製品を出し差別化する。

一方2,3世代前の旧製品については値崩れするが、コスト主導戦略を徹底してシェアを取る。

フレームワークを細かく覚える必要は無い

いずれも「完全競争に近づくほど収益性は下がり、独占・寡占に近づくほど集積性は高まる」というSCP理論の根本が共通している。フレームワークは便利だが、結局この根本を達成することを考え行動すればよい。

SCPの限界

時代を経て研究が進む中SCPの理論と辻褄が合わない研究結果が出てきている。それをどう捉えれば良いか、以降概要が記載されている。

収益性は産業構造だけできまるか?

いくつもの企業収益性の研究から最大でも20%程度しか収益性が産業構造に因ることはない。また最大50%程度は企業活動が重要。戦略グループとして考えた場合も 戦略グループと収益性の間に相関性(統計的に有意な違い)は無い という結果が得られている。

心理的な戦略グループ

戦略グループは様々な評価指標(地域の広がり、顧客セグメントなど)を規定して機械的にグループ分けを行っていたが、上記の様にそのグループ分けではSCP理論をフォローする結果が得られなかった。だがこのグループを「心理的な戦略的グループ」(経営者、幹部があそこは我々の競合だと思う企業の集まり)とした場合、SCP理論をフォローする結果が得られた。

現代はこういった認知・心理を加味した研究が進められておりトレンドとなっている(2部、3部でのトピックとなる)。

 

一時的な競争優位

SCP理論では「一度優位になると高い業績を長い間(10年程度)安定して上げる事ができる」と考えていたが、近年の研究では当てはまらないという結果が多く出ている。

①持続的な競争優位を実現できている企業は2−3%

②業績が落ちかけても、新しい手をうち業績を回復できる企業が増えている

ということが研究結果として出てきている。

 

サマリとして、

今の時代に勝っている企業は、SCPが前提としていた「(10年程度続く)持続的な競争優位」ではなく「一時的な競争優位を連鎖して獲得している企業である

という一定の理解が共通している。

SCPの限界をどう考えるか?

2点指摘している。

1点目はSCPが市場が「安定」していていずれ「均衡状態になる」ということを前提としている事があげられる。規制緩和・ITの発展・グローバル化(ハイパーコンペティション)により市場を規定する参入・移動の条件が目まぐるしく変わっている。いわゆる不確実性が高い状態。前提が違うので当てはまりにくくなってきている。

2点目が人の認知面を無視している事が挙げられる。SCP理論の大前提として「合理的」というものがあったが、人は認知を行い物事の決断をする。認知が関わる事象に対しては乖離が大きくなる可能性が高くなる。

 

この様に、理論の限界は理論の持つ前提の制約から来ていると考えられる。そのため理論の前提を理解しているとこれら限界も想像することができ、応用が効く様になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なるほどっ!独占に近づけば儲かる

やっぱり本で読みたいということで日本から送ってもらいました。『世界標準の経営理論』。ぶ、分厚い、、、

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どこから読んでもいいと前書きにあり、気になる心理学関連の第3部から読み、このブログでもいくつかまとめをアウトプットしていましたが、結局前章を参照することが多く読みづらかったので、気を取り直して最初から読もうとういことで第1章。

 

SCP(structure-conduct-performance:構造・遂行・業績)理論に関する内容。

もともと経済学のお話でしたが、有名なポーターさんが1970-80年代に経営学へと昇華させた。

 

簡単に言うと、「独占に近づいた方が儲かりまっせ」という理論。

なんとなく感覚ではそうなんだろうなと言うことがわかってはいるものの、

  • ミクロ経済学のよくあるグラフから利潤が最大になることの説明が明快で理解できること
  • どういうポイントを意識すると独占に近づくのか?ということへの示唆が得られること
  • 現代のプラットフォーマーの隆盛が説明できること

などが読んで良かったなというところ。

どうぞよしなに。ご参考まで。

 

 

完全競争とは

独占状態の対局である完全競争状態についてまずは定義している。

  • 条件1(価格操作不可):市場に無数の企業が存在して、どの企業も市場価格に影響を与えられない。
  • 条件2(参入・撤退障壁0):市場に新規で参入する際のコストが0。また撤退コストも0。
  • 条件3(差別化なし):提供する製品・サービスが同業他者と比べて同じ。差別化がない
  • 条件4(経営資源の移動自由):製品・サービスを作る経営資源(人・技術など)が他企業にコストを要さずに移動できる。
  • 条件5(技術ダダ漏れ):製品・サービスの情報を顧客・他社が持っている

※経済学の暗黙の前提として「企業・消費者は合理的な意思決定を行う」が常にある。

 

独占時に利潤最大化

ミクロ経済学のグラフを用いながら数学的に独占時に利潤が最大化することが説明されているが、直感的にも当てはまるので詳細説明は割愛。

 

ポイントとして、あらゆる企業は以下の2つの状態の間のどこかに存在する

完全競争状態→超過利潤0

完全独占→超過利潤最大

経済学のSCP

経済学のSCPの根本は「完全競争の状態から離れるほど(独占に近づくほど)企業の収益率は高まる」とうこと。

 

完全独占までは行かないいくつかの企業に売上が集中している寡占状態はどうだろうか。この場合、1社の行動が他社に影響を及ぼす度合いが大きくなり条件2が崩れる。

A,B,C社で寡占している際、A社が価格を下げるとB,Cも追随し値下げ合戦となってしまう。経済学の大前提であるA社が十分に「合理的」であれば価格引き下げを行わない「暗黙の共謀」(tacit collusion)状態になる。

例として、日本のビール業界→大手4社の寡占で値下げが起きない。コーラ業界のペプシとコカ・コーラ。

 

寡占になりやすい業界とは?

条件2の「参入障壁」を崩すところにポイントが有る。

規制・法律などの制度に加えて「規模の経済」(economic of scale)の要素が効く業界が寡占状態になりやすい。

思い出すのは携帯事業。周波数もライセンスが必要+アンテナ設置に対しての設備投資が莫大。規模の経済が強く働く産業は実質的に参入障壁が高く独占・寡占に近づく。

孫さんがドコモ・KDDIの2強状態の時に巨額の借金をしてでも参入した裏には、現代の3社で寡占している状態が描けており、利潤が高く保てるという事をわかっていたのではないかと想像すると、当時は奇抜に見えた行動が忠実に基本に従っている賭け要素が少ない行動だったんだと理解できる。

 

経営学のSCP

これまでは産業自体が独占・寡占の性質を持っているという考えであったが、ケイブス、ポーターが共同で1977年に発表した論文で有名。経営学のSCPと昇華させた。

ポイントとしては一つの産業の中でも「企業間の移動障壁」があるという条件3に関わるポイントである。

同じ産業内でも特性の似通った企業が複数ありグループが存在する。

例として自動車産業のなかでの軽自動車・ラグジュアリカー、、、などのグループがある。

「同じ産業にも企業特性ごとにグループが有り、企業収益にとってより本質的なのはそのグループ間の移動障壁である」というところがポイントとなる。つまり「差別化」をすることにより移動障壁が高くなりそのグループ内で利潤を高められるということになる。

 

現代のプラットフォーマーの例

GAFAMに代表される現代のプラットフォーマーは独占状態に近い状況になっている。この理由としてネットワーク効果というものがある。

「ユーザーにとって他の多くの人が同じ製品・サービスを使うほど自身もそれを使う効用が高まる」

GAFAM、アリババ、テンセントなど現代のプラットフォーマーはもっぱらこれを利用している。ケイブス、ポーターの主張した「差別化」から進化して、ネットワーク効果により独占に向かっている。

最近だとPayPayが100億円キャッシュバックなどでユーザー数を増やそうとしていたが、これも深く納得がいく。

ITが進みコミュニケーションがより柔軟に迅速に行える世の中では、過去には想定していなかったこのネットワーク効果を得ることで独占状態に協力に進める事ができ、みなこぞってこれを利用しようとしている ということである。

 

なるほどー。企業の行動の裏側がわかる上に、個人のキャリア戦略でもどの方向に進むべきかの示唆が得られて面白いですな。

 

 

 

 

 

えっ!?「未来は作り出せる」は妄信ではない!?

不安定で先が見通せず、変化の激しい世の中でもうまくチームを引っ張っていくリーダー達が存在する。彼らの行動ってなんなんだろうか?と思い探し出すと「センスメイキング」というキーワードに行き着く。

 

現在も盛んに研究が継続され、理論としては成熟しきってはいない。昨今のコロナ禍の状況もまさに予期しないイベント。この状況下で如何にリーダーが皆を引っ張るか試されている中、このセンスメイキング理論にはリーダーがどの様なことを考え行動するべきか示唆がある。

 

この記事では先般より読み進めている、早稲田大学教授入山章栄さん著『世界標準の経営理論』 第23章センスメイキング理論 の内容をベースに、初見の人でも理解を促進できる様、自ら理解した内容をできるだけ噛み砕いて内容を記載できればと思う。

 

(補足)

最近、興味があり西野さんのオンラインサロンに入り中を興味深く覗いておりますが、まさに西野さんの考え方、やり方に惹きつけられている人が多いこともこのセンスメイキング理論の最先端をも黙々とつっ走っているんだなと感じます。

salon.jp/nishino

 

どうぞ良しなに。ご参考まで。

 

この記事が参考になると思われる方

著者曰く、このセンスメイキング理論は「見通しの難しい、変化の激しい世界で組織がどの様に柔軟に意思決定し新しい物を生み出していけるか」に多大な示唆を与える。とのこと。

この文章をみて現在の科学的研究から根拠付けられている「示唆」が何なのか興味を持つ方。

 

ハンガリー軍のアルプスでの遭難ストーリー

センスメイキングで検索すると以下の様な話が出てくる。

ハンガリー軍がアルプス山脈で遭難。装備も失った中たまたまある隊員の一人がポケットから地図を見つけ、これを下に下山できる!と確信して下山を決意。地図をもとに無事下山に成功。しかし、下山後によくよく地図を確認すると、アルプスの地図ではなく、ピレネーの地図だった。

このストーリーがセンスメイキング理論の大枠を捉えている。つまり、正しい事実をもとにしなくても、皆が「腹落ち」していれば組織は前へ進め、通常だと不可能と思われることに対しても成功を収められるということである。端的には納得感のあるストーリーテリングが必要ということになる。

センスメイキングとは

日本語訳した際、まさに上記の「腹落ち」や「納得」と捉えると理解しやすい。この「腹落ち」を経営の中で理論化したものがセンスメイキング理論となる。

この章のキーメッセージ

「優れた経営者・リーダーは、組織・周囲のステークホルダーのセンスメイキング(納得感)を高めれば、周囲を巻き込んで、客観的に見れば起きえないような事態を意図してひき起こせる」ということ。まさに「未来を自らの手でつくり出す」ということ。そのために必要なことは、多義的な世界で、未来へのストーリーを語り、周囲をセンスメイク(納得・腹落ち)させ、足並みを揃え、環境に働きかけて、まずは行動する事が必要。これこそが、さらに多義的になるこれからの世界で、リーダーに求められることである。

そしてセンスメイクするためには以下7つの要素を気にするとよい。

  1. アイデンティティ
  2. 回想・振り返り
  3. 行為
  4. 社会性
  5. 継続性
  6. 環境情報の部分的感知
  7. 説得性・納得性

 

以下の章ではこの内容を哲学的な背景も絡めながら順に説明がされる。

ご興味に応じてどうぞ。

 

そもそも正しい事実とは?

筆者はセンスメイキング理論を理解する上で多少哲学的な物の見方について理解したほうが理解が進むとしている。以下では実証主義(positivism)、認識論的相対主義(relativism)の説明が続く。

実証主義(positivism)と認識論的相対主義(relativism)

例えば、目の前にある物体(バナナでもカメラでも何でもいい)がある。

はたして、自分から見えているその物とが横にいる別の人からも同じ様に見えているのだろうか?

他人がその物をどの様に認識しているかは本人にしかわからず、独自の認識のフィルターを通してしか物を見ることができないため、同一であると言い切れる保証がない。

 

こういった物の捉え方について哲学的には2つの見地があり、1つ目が実証主義、2つ目が認識論的相対主義である。

 

実証主義では、「絶対的な真実・真理がある」という立場であり、上記のような一つの物は誰が見ても同じであるという立場である。少し抽象化すると、「自分とそれ以外の環境は分離していて、自分は物を正確に観察・分析することでその物を知ることができ、またそれを他人と共有できる」

 

逆に、認識論的相対主義では「物の見え方・認識は、見る人とその周りの環境相互に依存している」という立場を取り、複数の人が「絶対的な唯一のもの」を共有することは難しいと考える。

経営論への応用

実証主義的な立場だと、自分が今直面しているビジネス環境は、誰しもが同一に見える絶対的なものであると考える。そのため、事業環境を正確に分析すれば、普遍的な真実・真理(正しい経営判断)が得られる」という前提にたつ。この場合リーダーにとって重要なことは正確に観察して、分析することになる。

一方、相対主義的な立場だと、誰しもが共通する「絶対的なビジネス環境の真理(絶対的に正しいビジネス判断)」は存在しない。行動して、ビジネス環境に働きかけると、環境認識自体も変化していく。実態とは人の認知の中で作り上げられるものであり、人の認識・解釈を通じて創造され、制度化され、習慣化されていく。

センスメイキング理論は後者、認識論的相対主義に近い立場を取ると考えると理解が進む。

 

センスメイキングが生かされる環境とは

センスメイキングは新しい、これまでにない、混乱的、先行きが見えないなどの環境下で重要になり、以下3つの種類の環境を想定している。

  1. 危機的な状況(crisis):市場の大幅な低迷、ライバル企業の攻勢、急速な技術変化、天変地異、企業スキャンダル、パンデミックもここに相当するのかと
  2. アイデンティティへの驚異(threat to identity):急激な業界環境の変化により、自社の事業・強みが陳腐化して「この会社はそもそもどうしていけば良いのか」「なんの会社なのか」というようにアイデンティティが揺らいでいる状況。
  3. 意図的な変化(intended change):新事業への投資活動など

この様な状況化

 

センスメイキングのプロセス

センスメイキングは前述の認識論的相対主義を前提として以下の4つのプロセスからなる。

環境の感知(scanning)

文字通り、環境の感知のプロセスとなる。

解釈・意味付け(interpretation)

前例の無い不安定な事業環境の中、同一の事象が起こったとしても解釈・意味付けのやり方で多義的になる。今何が起きているのか、問題の原因はどこにあるのか、何をすべきなのか ということに対して絶対的な一つの見解を見つけることが不可能な状況。

センスメイキングでは「組織の存在意義は、解釈の多義性を減らし、足並みを揃えることにある」と考える。組織化という。

となると、リーダーに求められるのは『多様な解釈の中から特定のものを選別し(selection)、それを意味づけ、周囲にそれを理解させ、納得・腹落ち(sense making)してもらい、組織の方向性を揃えること』となる。

ここで重要なのが納得性(plausible:もっともらしさ)となる。

以下ワイクによる2005年オーガニゼーション・サイエンスからの引用。

Diverse as these situations may seem, efforts are made to construct a plausible sense of what is happening, and this sense of plausibility normalizes the breach, restore the expectation, and enables projects to continue.

the concept of sense-making suggests that plausibility rather than accuracy is the ongoing standard that guides learning. *1

 多様性がある状況では納得性のある説明に力が注がれ、その納得性によって状況が改善され前に進む。時には、正確性よりもこの納得性が重要となる。

求められるのは、「現状はどうなっているのか」「我々は何をすべきか」についておおまかな方向性だけを示し、それに意味を与え、説得性のある言葉で周囲に語りかけて納得してもらい、足並みを揃えること

*2

つまりはストーリー性・ストーリーテリングが重要ということである。昨今他でも言われることが多いストーリー性について、学術的な背景はセンスメイキング理論からくるものである。

 

経営者がストーリーとして事業を説明した方が出資額が多くなったといった科学的研究結果がある。*3

行動・行為(enactment)

本からの引用。

多義的な世界では、「何となくの方向性」でまず行動を起こし、環境に働きかけることで、新しい情報を感知する必要がある。そうすれば、その認識された環境に関する解釈の足並みをさらに揃えることができる。このように、環境に行動をもって働きかけることを、イナクトメント(enactment)という。*4

例えば、ある森を初めて探検する人が、いくら入り口の前で森の中の状況を推測しても、自分が何に遭遇するかはわからない。探検者は、実際に森に飛び込むことで初めて、道に迷うなり、熊に遭遇するなり、泉を見つけるなり、何かの事態に出会う。そして道に迷ったり、熊に遭遇した時、探検者はその予想外な事態の瞬間に、冷静な現状分析をする余裕はない。むしろ、必死の行動から逃げ切って森を抜け出た後になって、「ああ、あれはこういう事態だったのだな」と納得(センスメイキング)するのである。*5

 

センスメイキングがあるから危機を乗り越えられる

一般的に、「センスメイキングが高い組織ほど、あらゆる危機的状況を乗り越えやすくなる」という研究結果が得られているとのこと。

 

センスメイキングの重要な示唆

最初のアルプスの雪山の例を思い出すと、通常まともに考えた場合には不可能だとオモされることが「思い込むこと」で実現した。

「通常不可能と思われることも、ある程度の方向性を持って信じて(腹落ちして)進めることで実現してしまうという力が人にはある」ということになる。セルフ・フルフィリング(自己成就)という。これは認知バイアスの一つとしても考えられる。

つまり、優れた経営者・リーダーは、組織・周囲のステークホルダーのセンスメイキングを高めれば、周囲を巻き込んで、客観的に見れば起きえないような事態を意図してひき起こせる」ということ。まさに「未来を自らの手でつくり出す」ということに他ならない

そのために必要なのは、多義的な世界で、未来へのストーリーを語り、周囲をセンスメイクさせ、足並みを揃え、環境に働きかけて、まずは行動する(イナクトメントする)ことだ。これこそが、さらに多義的になるこれからの世界で、リーダーに求められることである。

 

何を意識すればセンスメイキングできるのか、次に7つ上げる。

 

7つのセンスメイキングに必要な要素

  1. アイデンティティ:自身あるいは自身が所属する組織が何であるか?のアイデンティティに基づいている
  2. 回想・振り返り:人は経験している最中はセンスメイキングできない。事後的に振り返ることでのみセンスメイクできる
  3. 行為:行動することで環境に働きかける事ができる
  4. 社会性:センスメイキングは常に他者(社会)との関連性のなかで起きる
  5. 継続性:繰り返される、循環プロセスである
  6. 環境情報の部分的感知:人は認知のフィルターを通してしか事象が認識できないので、認識・解釈されたものは綱に全体の一部でしか無い
  7. 説得性・納得性:

感想

この章の内容はいくつも思い出す事があった様に思う。

  • これまで自分の思考の癖としていつもやってみないとわからないのになーと思っていたことをフォローする内容にも感じた。例えば、何か知らない新しい事を始める時、ある程度の調査はするもののこれをやればできるようになるということが全て整わないと始めないとなると何時までたっても始められない。まずは何でもいいので関連することやってみると見える範囲が広がり次が見えていくる。そういった経験がある。ある程度の方向性をつければ、「やってみる」ことで道がひらけて来たという感覚がある。今はAI、MBA、マイクロソフトAzureなど自分にとって新しい事が気になり続けているが、やはり やってみてから考える という事を心がけて進めようと思う。またそれは程度的を射た考えなんだなと「納得」した。
  • この章を読んで、自分の元々持っていたこういった やってみないとわからないじゃないか という思考の癖に対して、納得性が持てる様になったもこの本・章を読んだベネフィットだなと感じる。
  • ふと思い出すのはスティーブジョブスの名演説、ドットが線になりつながるという話。予め全てを想定しているのではなく、行動することで環境の見え方も変化して繋がったんだと理解することに納得感がでた。
  • その他、過去キャリアに悩んだ際、モチベーションアンドリンクのキャリアコンサルの方からのアドバイスも思い出す。山の頂上(ゴール)が見えず迷う時、時には川を下ること(通常だと頂上から離れてマイナスに思われることでも)で、自分のいる場所が移動し今まで見えなかった頂上が見える様になる」と言われたのも思い出す。その場に留まっていたら何も変わらない。極端にいうと、(何でも良いので)やってみようということ。
  • また、最近参加した西野さんのオンラインサロンで垣間見る西野さんの行動は、センスメイキング理論的なリーダーシップの最先端を体現しているなとつくづく感じる。ディズニーを超えるという目標に対して様々な準備をし、それを見聞きする者はなんとなく、これ、いけるんじゃないか?と納得・腹落ちし、皆の意思が統一され同じ方向に向かう。6万人を超えるメンバーが同じ方向に向かって大きな力となっているのがなぜなのかの理解が深まった様に感じる。
  • センスメイキング7つの要素の1つ「環境情報の部分的感知:人は認知のフィルターを通してしか事象が認識できないので、認識・解釈されたものは綱に全体の一部でしか無い」という考え方は常日頃から持つようにしたい。

*1:Weick, K. E. et al., 2005. “Organizing and the Process of Sensemaking,”

*2:入山 章栄. 世界標準の経営理論 (Japanese Edition) (Kindle Locations 7977-7978). Kindle Edition.

*3:Martens, M. L. et al., 2007.“ Do the Stories They Tell Get Them the Money They Need? The Role of Entrepreneurial Narrativesin Resource Acquisition, ”Academy of Management Journal, Vol. 50, pp. 11071132.

*4:入山 章栄. 世界標準の経営理論 (Japanese Edition) (Kindle Locations 8028-8031). Kindle Edition.

*5:入山 章栄. 世界標準の経営理論 (Japanese Edition) (Kindle Locations 8031-8036). Kindle Edition.

感情の理論

様々な経営理論がはググれば多く検索でき、普段の生活の中でも色々と見聞きはするものの、 そんなにうまく行かないよな〜 と感じる事がよくある。人の判断は結局"感情"が関係してくるのでそんなに簡単にはいかないのでは?という感覚がある。

その感覚は正しい様で、経営における「感情の理論」というのも経営学の中で取り扱われており(割と最近から)、感情のメカニズムを把握することがリーダーや経営者に不可欠となってきている。

先般より、早稲田大学教授入山章栄さん著『世界標準の経営理論』について読み進めておるのですが、この記事では第22章感情の理論 をベースに現時点での科学的根拠に基づいた経営における感情の理論について概要・定石・昨今の動向などを網羅的にまとめております。どうぞ良しなに。

まとめのまとめ

  • AIに代替できない人らしさである感情が企業競争力の根幹となっていく
  • 感情→認知と影響を与えるが認知→感情という方向性もある。互いに不可分、相互影響している。
  • なんやかんやでポジティブが基本的にはいい影響が多い
  • 成功による慢心などで緩んだとき意図してネガティブ感情を利用し、引き締めることでサーチ((認知が限られている組織(意思決定者含む)が自身の認知の範囲を広げ、新たな選択肢を探す行動が進む。
  • むりやり表現を変化させるのではなく、ディープアクティング(自分の意識・注意・視点の方向を変化させ、感情そのものを自分が表現したい方向に変化させてから自然に実施する感情表現)により感情と表現を一致ささせるのがいい
  • 個人としては普段から「多角的な視点」「広い視点」「相手の立場に立って考える」ことでディープアクティングにつながる。

感情のメカニズム

概要及び歴史

人の心理には認知と感情がある。

認知とは:外部から収集した情報を処理してアウトプットを出す「脳の情報処理プロセス」。thinkにあたる。

感情とは:人が物事に対して抱く「気持ち」。feelに当たる。

1980年代までの経営学の心理学ベース理論は認知心理を基にしていた。

1990年代から心理学で発展していた「感情の理論」が経営学でも取り込まれてきている。

感情への注目が集まる3つの理由
  1. 感情は認知に多大な影響を与える。感情→認知。合理的な判断を促す認知の部位(前頭葉)と、感情を司る部位(大脳辺緑系)が共存しあっている。
  2. 感情をうまく扱わないと、意思決定も十分にできない上、他者も動かせない。感情は遠くに伝搬しにくい。ネットの時代に入り、感情のこの特殊性をうまく扱うことへより注目が集まってきている。
  3. AIで代替しにくい。感情の重要性が人に残り、これからの時代企業競争力の根幹となっていく。

感情マネジメントはこれからの企業競争力の源泉となりリーダー・経営者に欠かせない資質となる。(経営方針にも情緒的な内容を織り込む企業が出てき始めている)

3つの感情
  1. 分離感情:一般的に感情と呼ぶもの。怒り、喜び、憎しみ、恐れ、嫉妬、驚き、悲しみ、幸福感、妬み、いらつき、、、。短い期間で収まりやすい
  2. 帰属感情:感情の個性。陽気な人、心配性、怒りっぽいなど。ポジティブ感情、ネガティブ感情に大別される。どちらよりかPANSAS(Positive and Negative Affect Schedule)というテストで調べられる。
  3. ムード(職場・チームレベル):なんとなくそこに漂っている感情、雰囲気。

ムードの特徴

・チーム職場に漂う

・安定してチーム・職場に定着

・そのチーム・職場に限定的

つぶやき

リモートワークでTV会議が増えてきている中、感情が伝わりにくい事を改めて認識。カメラをオンにすることも心がけよう。またカメラオンのときは服装しかり、感情表現に注意しながら話をしよう。

 

感情の理論

感情イベント理論

以下の図が網羅的に表している。

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  •  感情は外部イベントから刺激を受けることで始まる。分離感情をもたらす(①、②)
  • ポジティブな外部刺激よりもネガティブな外部刺激の方が、心理的な影響度が大きい。感情の非対象性(emotional asymmetry)。5倍という計測結果もある。
認知評価理論
  • 外部刺激→分離感情の体験の間に認知評価(cognitive appraisal)が挟まる
  • この認知評価は帰属感情に影響される。⑤
  • 認知評価→分離感情の体験→帰属感情→認知評価 とサイクルがある。ポジティブ/ネガティブ感情が強いひとはその特性がこのサイクルを通してより強くなっていく。
ムード理論
  • 人は感情を外に向けて表現され、周囲に伝達される(感情伝播)。⑥
  • 感情は遠くまで伝播しないため、リーダー・経営者はいかに感情を企業の隅々まで行き渡らせるかを考える必要がある。
  • 具体例:2014年日本コカ・コーラ会長から資生堂社長に転じた魚谷雅彦さんは就任後海外を含めた現場を周り、1万人ちかく社員に語りかけていた。「自分の感情を伝播させること」を目的に。

感情が人・組織に与える複雑な効果

このような仕組みを理解したら、じゃー、こういった感情の効果はどの様に人・組織に影響を与えるのか が気になってくる。常に組織にポジティブ感情を持ち込むべきか?時にはネガティブ感情も有用な場合があるのか?

いくつか法則がある。

  • ポジティブ感情は、仕事への満足度を高めやすい
  • ポジティブ感情は、モチベーションを高めやすい。
    ポジティブ感情→自己効力感向上→モチベーションアップ。(第19章モチベーションの理論 で自己効力感・モチベーションの関係性参照)
  • ポジティブ感情は、他者に協力的な態度をとる事を促す
    e.g. ポジティブな感情を持つ人の方が、同僚・上司から仕事上のサポートを受けやすい
  • ネガティブ感情は、満足度を下げるのでサーチを促す
    ネガティブ感情は人・組織の気持ちを引き締める効果がある
  • ポジティブ感情は知の探索を促す
    ポジティブ感情は満足度を高めて組織の雰囲気を緩めてしまうが、雰囲気を引き締めてサーチを続けるなら、「多少は精緻さ、厳密さを書いても、より大胆で新奇性の高いアイディアを求める」ことを促す
  • ネガティブ感情は知の深化を促す
    現状を正確に・ミスなく、修正・改善する意識を高める。ネガティブなムードの方が、分析的に考え、正確性を求める傾向がある。

<図での表現>

f:id:SATTON_LONDON:20200518064807j:image

サーチ:認知が限られている組織(意思決定者含む)が自身の認知の範囲を広げ、新たな選択肢を探す行動。現状に対する満足度が低いほどサーチが活発化、「自分の認知はまだ狭く、この夜にはもっと自分をサティスファイさせてくれる選択肢があるのではないか」と考える。(第11章カーネギー学派の企業行動理論 参照)。知の探索(幅を広げる)・深化(掘り下げる)に大別される。

アスピレーション:目標

サティスファクション:仕事の満足度

+、ーは相関の方向性。+であれば上がれば上がる。ーは上がれば下がる。

 

つぶやき

ポジティブ感情がポジティブに働く事が多いのでほぼほぼポジティブ感情の漂うムードがある方がいい様に見える。ネガティブ感情が効果的に働くのは組織に慢心があり緩んでいる時、気を引き締めたい時。何か一つ成功して、これでいいやと思う時に気を引き締め次の種をみつけるサーチを促す。

 

感情ディスプレイを巧みに操れ(感情制御)

上記で感情のメカニズムが理解できたが、どの様にコントロールするのかが難しいところ。人為的に感情を調整する事を心理学・経営学では「感情制御」と呼び研究が進められている。

Emotional Intelligenceという言葉が注目されている。先に流行った「EQ心の知能指数」((D. Goleman, 1995. Emotional Intelligence, Bantam.が有名どころ。なるほど。本が流行った当時に読んではいたが、こういった研究の流れがある中で流行っていたのかと納得。

EIの4つの要素
  1. Perceiving:自身や他者の感情にきちんと注意を払えているか
  2. Using:特定の勘定が認知にどのような影響を与えるかを把握できているか
  3. Understanding:感情が時間とともに変化するなど仕組みを理解できているか
  4. Managing:感情をうまく制御できるか

・EIを計測するテストMSCEITがある。EIが高いとあらゆる場面でパフォーマンスが高い。

EIの研究は今も盛んに研究されているが、特に研究が進んでいる分野として「感情表現」があげられる。

感情表現、笑顔の効果
  • 笑顔が増えることに因るいい効果が多い。アイコンタクト・笑顔による顧客満足度向上、
  • 一方で無理して作る笑顔のネガティブな側面も明らかになってきている。すぐバレる。本人が鬱状態になる。

じゃー、どうするのがいいか?

感情労働理論

サーフェース・アクティング

外に上限する感情と、自分の本心にギャップが有る状態での感情表現

ディープ・アクティング

自分の意識・注意・視点の方向を変化させ、感情そのものを自分が表現したい方向に変化させてから自然に実施する感情表現

CAの例

あるCAが機内で酷いクレーム対応をした際、その乗客が初めて飛行機に乗る人ということに気づき、初めての経験のため不安で苛ついているんだなと理解することで、同情へと感情が変化した。顧客の態度をどう捉えるか という認知の視点をずらして感情を変化させた。ディープ・アクティングを行った。

認知を動かし感情を動かす

ディープアクティングの有利な点

・心理負担が小さい

・自分の感情に沿った表現となり周囲の人が影響を受けやすい

 

いずれにしろ自分の本来の感じ方を無理やり変えているから良くないという声もあるが、感情を変える出発点が「認知の側にある」ということが重要

「多角的な視点」「広い視点」「他者視点」を持つことの重要性につながる。認知→感情の方向性。

 

スッキリっ!経営における意思決定理論

経営における意思決定について研究に基づいた定石を網羅的に知りたいと思ってググッても一つひとつの理論はなんとか出てくるが網羅的な説明や昨今の動向について情報がない。

先般の投稿によって世界標準の経営理論について読み進めておるのですが、この記事では第21意思決定の理論 をベースに科学的根拠に基づいた経営における意思決定理論の概要・定石・昨今の動向を網羅的にみることができるかと。

 

F.Y.I.

前章 第20章バイアスの理論 のまとめはこちら。

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意思決定理論のカテゴリ

規範的意思決定論(normative decision making)

・合理性などを基準にバイアスのない状態での「あるべき、合理的な意思決定」、いわゆる「〜べき論」

行動意思決定論(behavioral decision making)

・とはいえ、現実に人はどの様に意思決定をするのか?なぜ人は合理的に意思決定できないのか、そのバイアスをあぶり出す。前章19章バイアスの理論とつながるところである。

第3の意思決定論(直感)

・人は合理的・論理的にじっくりと意思決定するよりも、直感で意思決定した方が望ましい結果を得られる。直感のメカニズムを神経科学の観点からも解析している。

 

規範的な意思決定論

期待効用理論

期待値とは

いきなり具体例。

事業A:50%成功し利益50億円。50%失敗し損失30億円

事業B:30%成功し利益90億円。70%失敗し損失20億円

の場合

事業Aの期待値:50*0.5ー30*0.5=10億円

事業Bの期待値:90*0.3ー20*0.7=13億円

よくある期待値と同様。合理的であれば事業Bへの投資を決定する。

 

期待効用とリスク選好

合理的に感がれば上記のとおりだが、意思決定は人が行い、意思決定者の主観が影響してくる。

フォン・ノイマンらは人が投資の得失にどれくらいメリットを感じるかを「期待効用」(expected utility)として表した。

効用:利益など特定の損失に対して当人が感じる主観的な満足度のこと

 

・人は所有する資産が大きくなるほど、投資などによって追加的に得られる利得に対する追加的な効用の上昇が小さくなる。(簡単に言うと、持ってる資産に比べて儲ける量が少なければあまり魅力を感じなくなる)

→持ってる資産が大きくなるほど同じ成功確率の事業に対して投資をためらいがちになる。つまり 不確実性・リスクを恐れる ことになる。

ほぅ。おもしろい

リスク性向(risk preference):投資リスクに対する態度

資産が大きいほどリスクを回避する傾向「リスク回避的(risk averse)」と呼ぶ

資産の大小に関わらずリスク選好が変わらない人を「リスク中立的(risk neutral)」

資産が大きいほどむしろリスクを好む人を「リスク志向的(risk seeking)」という。

 

ひとは性格、立場、状況によりリスク性向が変化する。

経営者(その会社へ集中している)は投資家(ポートフォリオを組みリスクヘッジができている)よりもリスク回避度が強くなる。

→株主と経営者の間に起きうるエージェンシー問題(→6章)の根源となっている。

期待効用理論の骨子

で、どうするの?というのは意外と単純で

「これらリスク性向も踏まえ、自身にとって最大の期待効用をもたらす事業をえらんで投資すべき」

というところ。

あまり新しい示唆はない様に感じる。

 

プロスペクト理論

この図が全てとのこと。

ファスト&スロー」などで有名なプリンストン大学名誉教授ダニエル・カーネマン、スタンフォード大学のエイモス・トベルスキーの2人が「行動経済学」という分野を切り開いた。

f:id:SATTON_LONDON:20200512080816j:image

・人は投資成果に対して「主観的なリファレンスポイント」を持つ

・投資成果にどれくらいの効用を持つかは「投資成果がリファレンスポイントからどのくらい乖離しているか」で決まる

・人は追加的な利得より、追加的な損失を心理的に重く受け止める(損失をより避けたがる)。損失会費制(loss aversion)

 ・(

右側のカーブが上に凸)人は大きな利得を得るほど、効用の追加的な伸びが鈍化する

・(左側のカーブが下に凸)また、損失が増えるほど、効用の追加的な減少幅が減る。損をするほど追加的な損失について鈍感になる。損するほどリスク志向が高まる!!

 

最後のポイントは企業が損切りできない理由につながる。

エスカレーション・コミットメント:事業の失敗が明らかなのにも関わらず、撤退ができず、失敗事業に更に資金を注ぎ込んでしまう

最近ではソフトバンクグループ孫さんのウィーワークへの追加投資が思い出される。

 

フレーミング効果

上記プロスペクト理論のポイントはリファレンスポイントが可変であるというところ。

このポイント次第では一つの事象が+にもーにも捉えられる。

人の主観に働きかけ、リファレンスポイントを動かすことで意思決定に影響を与えられる。これはフレーミング効果と呼ばれる。

・相手にリスクを避ける行動を取ってほしいなら利益を強調する

・逆に、リスクを積極的に取ってほしい場合は損失を強調する

(少し直感からずれるが、少し調べてみてアップデートする)

 

直感の理論の基本:二重仮定理論(dual-processing theory)

2種類の意思決定過程

ひとの脳内では、外部からの刺激に対して大きく2種類の意思決定システムが同時に異なるスピードで起きる

システム1:早く、とっさに、自動的に無意識的に行われる意思決定。ヒューリスティック、直感。

直感:本能とは異なる。直感はあくまで「無意識の知性」。知性なので習得・改善が可能。

 

システム2:時間をかけて、段階的、思考して意識的に行う意思決定。reasoning(論理的思考・推論)f:id:SATTON_LONDON:20200512084928j:image

3つの意思決定バイアス

システム1はバイアスがかかりやすい。

・現状維持バイアス

プロスペクト理論の損失回避性から導かれる。追加的な利益よりも追加的な損失に対してより敏感になり、現状維持の意思決定を重視しがちになる

・サンク・コストバイアス

よく聞くバイアス。既に投資したコストが回収できないとわかっていながらも、投資済みコストに影響されうまくいかない投資にさらに追加投資をしてしまう。

・アンカリングバイアス

最初に与えられた情報を手がかりに検討を始め、最終的な結論をえる心理的な傾向。職業柄、提案初期にある程度の高額見積を見せるのは日常でもよくやってしまう。

 

ではシステム2で論理的に考える事がいいのかというと近年では疑問も出てきている。直感の方が場合により良い結果に結びつく事が近年の経営学(認知心理学、神経科学)で盛んになってきている。

バイアスとヴァライアンスのジレンマ(トレードオフ)

マックス・プランク研究所認知科学者ゲルド・ギレンザーによる2009年のレビュー論文からの引用。

「直感は意思決定のスピードを早めるだけでなく、状況によって論理思考よりも性格な将来予想を可能にする」*1

 

意思決定時のエラー度を以下で表現している。

予測エラー度 = (バイアス)^2 + (ヴァライアンス) + (ランダム・エラー)

 

ヴァライアンス(variane):過去の経験や情報収集などにyり得られた変数が、将来の予測にはどれだけ"使えないか"の程度

ランダム・エラー:外部からの予想外の変化

 

バイアスとヴァライアンスはトレードオフの関係にある

 システム2の思考を行うと考えている変数の数が多くなる。不確実性が高まるとヴァライアンスが高まる。一方システム1の直感で意思決定する場合、そもそも考慮している変数自体が少なくなり、ヴァライアンスが入り込む変数自体が少ないので結果、(「実は予測には使えない変数」が入り込む余地が少ない)ヴァライアンスが小さくなる。

 ・不確実性の高い環境で直感が常に優れているということではない

直感というのは考慮すべき変数を絞る事を意味する。そもそもこの絞り方が重要であり、意思決定者の様々な経験に裏打ちされたものでないと逆にヴァライアンスが高まってしまう。

直感とは「玄人の勘」が望ましい。

・経験の薄い「素人」の場合はシステム2(論理的思考)により意思決定をした方がいい ということも言える。

・システム1、システム2の考え方はシリアルに発生するのではなく、同時に起こりかつ補完的に作用し合う(parallel-ompetitive)という研究もある。

・面白いことにこのバイアスとヴァライアンスのジレンマはかの有名な、スタンフォード大学キャスリーン・アイゼンハートの「シンプルルール」とも整合性が取れると主張している。ルールをシンプルにすることにより、認知におけるヴァライアンスを減らし、意思決定の制度を高めると考えられる。

 

どうぞ良しなに。

ご参考まで。

*1:Gigerenzer, G. & Brighton, H. 2009. "Homo Heuristicus: Why biased Minds Make Better Inferences," Topic in Cognitive Science, Vol. 1, pp. 107-143.

なるほどっ!経営における認知バイアスの防ぎ方

認知バイアス自体の情報は数々の情報を取得することができるが、なかなか解決策について科学的に言及されている情報にたどり着かない。

先般の投稿によって世界標準の経営理論について読み進めておるのですが、この記事では、第20章認知バイアスの理論 内に示唆があったのでまとめる。

個人的には、なぜダイバーシティが声高に謳われているのか、マインドフルネスがもてはやされていのかなども理解でき、いい勉強になりました。

 

F.Y.I.

前章 19章モチベーションの理論 はこちら。

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ご参考まで。

人間には認知バイアスが備わっている

人間には認知バイアスが備わっている。そもそも 認知の届く範囲に限界がある というのは物理的に考えても正しい理解。また認知していたとしても(過去の記憶も含む)無意識のうちに自分が優先する情報を認知のフィルターで取捨選択しているというのが認知心理学で証明されている。

個人レベルのバイアス

人間には様々な認知バイアスが備わっているが、経営学で重視される「認知的な評価プロセス(パフォーマンスアプレイザル performance appraisal)」について例を記載する

 

ハロー効果

製品・サービス・他者を評価する際、詳細な分析を行わず、顕著な特徴だけの印象に基づき評価してしまうバイアス。「高学歴だから人格面も優れているに違いない」など。

有名大学から出される技術ライセンシングほど承認が通りやすいという実験結果がある*1

利用可能性バイアス

簡単に想起しやすい情報を優先的に引出し、それに頼ってしまうバイアス。

・想起容易性
記憶時のインパクトが大きい情報。

・検索容易性

記憶の中から即座に検索しやすい情報。スーパーで とりあえず、いつものものを買っておけば間違いがない と判断してしまう

・具体性

身近な人から直接聞いた具体的な情報は、普遍的な代表性があるとは限らないにもかかわらず、優先して取り扱われる

対応バイアス

他者が何かの事件に巻き込まれた際に、その本当の理由は周辺環境などにあるのに、理由をその人の人柄・資質などに帰属させてしまうバイアス。

これは最近でも記憶があり、 会社の役員クラスの人が外出自粛をしているにもかかわらずコロナにかかった といった情報があった際、その人の性格・資質からくる行動特性で何かかかりやすい状況になっていたんじゃないかと自然に思ってしまっていた。まさにこれだなと。。

代表性バイアス

典型例と類似している事項の確率を過大評価しやすいバイアス。

海外でたまたま知り合った日本人が面白かったら関西出身だと考えてしまう。面白い人→関西人 という典型例があり確率が高いと思ってしまう。

 

組織レベルのバイアス

社会アイデンティティ理論

個人の組織への帰属意識のバイアス。

新興国企業が先進国企業を買収する際、 平均よりも16%も高い買収プレミアムを払う という統計がある。 母国を代表して先進国企業を買収している というバイアスが働き、高いプレミアムを払っても完遂させようとしてしまう。

社会分類理論(social categorization theory)

組織のなかで人が他者を無意識にグループ分けする認知バイアス。

人は認知に限界があり、組織があるとグループに分類して認知する傾向がある。自分と同じグループの人に好意的な印象を抱くバイアス(イングループバイアス)がある。

多様性は組織にとってプラス? 多様性(ダイバーシティ) v.s. イングループバイアス

タスク型多様性は以下に分類される。

・タスク型多様性:治験・能力・経験・価値観など。外見に現れにくい。

・デモグラフィー型多様性:性別、国籍、年齢など。目に見えやすい。

以下メタアナリシス*2の結果。

 

結論1:タスク型多様性は組織のプラス

なぜか?組織の成長に必要な新しい発想は「既存の知と知の、新しい組み合わせ」から生まれる。→同書第2部第13章

 

結論2:デモグラフィー型の場合プラスの影響を及ぼさない。場合によってはマイナス。

なぜか?上記イングループバイアスにより軋轢が生じ、交流が滞るため。

グーグルも苦慮するダイバーシティ戦略

グーグルも多様性を重視するが、「イノベーションのためにダイバーシティを進めている」と名言している。これは明らかに上記のタスク型の多様性を求めている。

だが、同時にデモグラフィー型多様性も増してしまうため、スタンフォード大学と研究を行い*3、バイアスを取り除く研修を徹底している。

 

組織的解決方法は経営陣の多様性

アテンションベーストビュー(attention based view)の考え方

アテンションの定義:

noticing, encoding, interpreting and focusing of time and effort," through which people locate some information in their memory and ignore others *4

アテンションとは認知的な気付き、読み取り、解釈、集中であり、それにより人は特定の情報だけ認知し、それ以外を無視する

特徴:

・企業は人の認知の集合体という前提にたつ。

・企業の意思決定・行動は、その意思決定者の限りあるアテンションを企業内のどの諸問題に分配するか、それをどのくらい十分解釈できるかに大きく影響する

・経営者がどの情報に注意を払い、どの情報を軽視するかは認知バイアスにより強く規定される

・認知のバイアスは経営者の取り巻く組織構造・人脈・メンバー編成にも強く規定される

・組織メンバー構成をうまく組めば、自身の認知バイアスをも抑制できる事を示唆する

具体例

ペンシルバニア大学ドナルド・ハンブリック「オーガニゼーション・サイエンス」への発表*5。では経営陣のメンバーの間に多様性(経験・バックグラウンドなど)が高い企業の方が市場の変化に正しく・素早く対応することができた。

→一人ひとりが持つ認知バイアスを解消する一つの有用な手段は、経営メンバーの多様性 という示唆が得られている

認知バイアスを防ぐ示唆

個人の認知バイアスの解消となると「個人が自覚するしかない」といった精神論しか言われないことも多いが、ABVではそれを組織で乗り越える受容性を示唆している

ABVは研究が進められており、アテンション機能がdefault-mode(自分の内面世界を漂う)、salience(違和感にきづく)、executive(言語化やイメージ)がある事が神経科学の研究から明らかになってきている。

これらの機能が脳内で有機的に結びつき、自由に使いこなすことができるほど、創造性が高い という研究結果*6も得られ始めている。

個人の内面からのバイアス克服はマインドフルネス

個人のレベルでバイアスを防ぐ手段として注目されているのがマインドフルネスである。こちらも科学的根拠の確立までは至っていないが、研究が進められている。

マインドフルネスとバイアスの関係

Fundamentally concerned with "being attentive to and aware of what is taking place in the present", mindfulness has been posited to help people become "alive" to the present moment, attuned to their internal processes and state, and healthier, physically and mentally. *7

現在何が起こっているかに注意を向け気づくことに意識を集中させる。マインドフルネスにより今を生き、内面のプロセス・状態を気づき・理解しより身体的・精神的に充実させる。

 

これら定義から、 マインドフルネスの一つの目的は認知バイアスを解消すること とも捉えられる。周囲の環境のその瞬間の状態に意識を傾けること。マインドフルネスが高い人のほうがバイアスなく周りを見渡せるはず というスタンスとのこと。

 

おすすめ瞑想のやり方、参考図書など

個人的にも続けている瞑想などマインドフルネスの鍛錬がバイアスを防ぐいい方法の一つとして上がっているのは非常にいいことかなと。

以下DaiGoさんもおすすめする瞑想のやり方と参考書です。

 

ジョン・カバット・ジン/著

マインドフルネスストレス低減法

 

グーグルのマインドフルネス実践法

サーチ・インサイド・ユアセルフ

 

www.youtube.com

 

 

*1:Sine, W. D. et al., 2003. "The Halo Effect and Technology Licensing: The influence of Institutional Prestige on the Licensing of University Inventions," ManagementSicence, Vol. 49, pp. 478-496.

*2:Joshi, A. & Roh, H. 2009. "The Role of Context in Work Team Diversity Research: A Meta-Analytic Review." Academy of Management Journal, Vol. 52, pp. 599-627. 及び Horwitz, S. K. & Horwitz, I. B. 2007. "The Effects of Team Diversity on Team Outcomes: A meta-Analytic Review of Team Demography, " journal of Management, Vol. 33, pp. 987-1015.

*3:Foloni, R. "Here's the Presentation Google Gives Employees on How to Sport Unconscious Bias at  Work," BUSINESS INSIDER, February 11, 2016.

*4:Ocasio, W. 1997. "Towards an Attention-Based View of the Firm." Strategic Management Journal, Vol. 18, pp. 187-206.

*5:Cho, T.S.&Hambrick, D. C. 2006. "Attention as the Mediator Between Top Management Team Characteristics and Strategic Change: The Case of Airline Deregulation." Organization Science, Vol. 17, pp.417-526.

*6:Beaty,R. E. Et al., 12018, "Robust Prediction of Individual Creative Ability from Brain Functional Connectivity," PNAS, Vol. 115,pp. 1087-1092.

*7:Dane, E.2011. "Paying Attention to Mindfulness and Its Effects on Task Performance in the Workplace," Journal of Management, Vol. 37,pp. 997-1018.

【世界標準の経営理論】19章 モチベーションの理論

先般の投稿によって世界標準の経営理論について読み進めておるのですが、もくじを見る中でまずは興味を持った第3部ミクロ心理学。今回の投稿では第19章モチベーションの理論につてまとめられればと。(前章:18章リーダーシップの理論

 

長くなった、、、もう少し端折って次回から書こう。

時間がないときは最初のまとめのまとめで。

 

 

 

まとめのまとめ

内発的動機の方がいい。

そもそも仕事には内発的動機を高めるものとそうでないものがあり(職務特性理論)、要素は以下。

  • 多様性(variety)
    必要とされる能力の多様性
  • アイデンティティ(identity)
    最初から最後まで関われること
  • 有用性(significance)
    他社の生活・人生に影響を与える
  • 自律性(autonomy)
    自律的に仕事ができる
  • フィードバック(feedback)
    成果を認識

 

人の動機は「E:期待(やればできる度合い)」「V:誘意性(報酬の魅力度合い)」「I:手段性(成果が報酬につながる度合い)」という認知で決まる。(期待理論)モチベーション=E * sum(V*I)

 

人はより具体的、より困難なゴール(その人の能力の範囲内)を設定するほど、モチベーションを高める。人は、達成した成果について明確なフィードバックがある時、よりモチベーションを高める。モチベーションは人為的に高められる。(ゴール設定理論)

 

自己効力感がある人が高パフォーマンスとなる。(社会認知理論)何が刺激するのか?

  • 過去の成果の認知:よくできた俺次もいける。
  • 代理経験:あいつができるなら俺もできる。
  • 社会的説得:チームが君を指名している!などポジティブな言葉
  • 生理的状態:精神・生理的に安全であることが最低ライン

 

他社視点のモチベーション(PSM)がある方がパフォーマンス・創造性がアップする。(PSM理論)

 

上記の要素を考慮した内発的動機↑xPSM↑ を目指すとパフォーマンスが上がる。

前章を含めると「TFSxSL」によりこれらがもたらされる。

 

TFL:明確にビジョンを掲げて(自身の内発的動機↑)自社・自組織のしごとの魅力をメンバーに伝え、啓蒙し、新しい事をを奨励し、学習や成長を重視する。→他者の内発的動機↑

SL:チームメンバー全員がそれぞれリーダーの様に振る舞い、互いに影響し合う

TFLxSL:自身と他者がビジョンを持って互いに啓蒙・刺激し合うこと。(彼のビジョンはなにか、彼女が面白いと感じることはなにか を考える他者視点が成就する→PSM↑

 

モチベーションの定義とは

モチベーションは人の行動に影響を与え、以下3つの要素を含む。

1.行動の方向性

2.行動の程度(活力、規模)

3.行動の持続性

 

モチベーションにより人は 「特定の行動に向かい、それに対して熱意をもち、それが持続する」 というのがわかりやすい例文になるのではと。

 

モチベーションメカニズム全体像

筆者が作った全体関連図。全体を俯瞰するためにいい図。ここに載せてもいいものか微妙ですが、筆者も幾ばくかは世の中に広まる事を求めてるでしょうからまーよかろうかと。

複雑なチャートですが、ここでは単純に やる気⇒行動 という事ではないということがポイントとのこと。

 

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モチベーションの種類

外発的動機(extrinsic motivation)

報酬・昇進など「外部」からもたらされる影響で高まるモチベーション。

内発的動機(intrinsic motivation)

純粋に「楽しみたい」「やりたい」といった内面から湧き上がるモチベーション。

 

ポイント(内発的動機の方が重要)

外発的動機よりも内発的動機の方が 個人の行動へのコミットメント、持続性を高める というのがコンセンサスとなっている。

つまりは 内発的動機の方が質がいいモチベーションにつながる ということですな。感覚的にもあっていますね。

 

各理論の概要

理論1:ニーズ理論(needs theory)1940年代~

考え方

・人間には根源的な欲求があり、その欲求がモチベーションとなり、行動に影響を与える

 

・マズローの欲求5段階がこの考え方の一つ

生理的欲求⇒安全欲求⇒社会的欲求⇒尊厳欲求⇒自己実現欲求 と、低位の欲求が満たされると上位の欲求を求める様になる。

と有名どころが出てきており感覚的にもあっておるのですが、これは ほぼ科学的には当てはまらない という結論になっている。

(この部分についてはあまりコメントもなく、出展も記載がないです)

 

理論2:職務特性理論(job characteristics theory)1970年代~

考え方

仕事には、従事者の内発的動機を高めるものと、そうでないものがある

 

じゃー何にがポイントか?5つのポイント
  1. 多様性(variety)
    何が多様か?といううと、必要とされる能力が多様 という事の様です。いわゆる簡単・単純なことをずっとやりたくない。
  2. アイデンティティ(identity)
    最初から最後まで関われることがアイデンティティということの様です。
  3. 有用性(significance)
    他社の生活・人生に影響を与える
  4. 自律性(autonomy)
    自律的に仕事ができる
  5. フィードバック(feedback)
    成果を認識できる

 

この基準に沿う様に業務をデザインし直す(ワークデザインする)ことで全体のパフォーマンスが上がる。

 

ここまで聞いてふと思い出すのが、われらがパレオさん「科学的な適職」

 この中でも言われている7つの徳目(自由、達成、焦点、明確、多様、仲間、貢献)ににもいくつか含まれており、なるほど、モチベーション高くできる職があるいみ適職なのかと思う次第であります。

パレオさんも同じような論文をリファーしている事でしょうし。 

あと、中田YouTube大学でまとめがありましたのでこちらもご参考まで。

www.youtube.com

 

 理論3:期待理論(expectancy-valence theory)1960年代〜

特徴

・人は合理的に意思決定をする一方で、その意思決定・行動はその人の認知に規定される

・人の動機は、その人が事前に認知・予測する「期待」「誘意性」「手段性」の3つに影響を受ける

 

期待:Xという行動をすればYという結果・成果・報酬が得られるであろうという見込み(やればできる度合い)

誘意性(valence):報酬に対して個人が持つ主観的価値、または魅力の度合い

手段性(instrument):実際の成果が期待した見返りもたらす手段としてどれくらい役に立つか(正当に評価され見返りに反映されなければ低くなる)。

 

検索すると以下のページが出てくる。ここでは手段性を道具性と表現しているが似た内容がわかりやすく説明されている。(この連載面白そう、、、また今度読もう)

数式(掛け算)で表現されるとわかりやすい。

F = E * sum(V*I)

F:行動への力(モチベーション) E:期待(やればできる度合い) V:誘意性 I:道具性(手段性)

【第8回】やる気は測定できる?~心理学理論に基づくモチベーションの測定~:株式会社日立システムズ

 

以下概念図

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 理論4:ゴール設定理論(goal setting theory)1960年代〜

特徴

・「ゴール・目標の設定」をモチベーションの基礎として加えた

・「人は、自身の目的を実現するために働く意思を持つ」という仮定を置く

・人は、成果に対してフィードバックを受けることで、自分の成果がどの様に評価されているか(報酬)を正確に認知し、満足度を高め、より高いゴールを設定する。

 

以下命題を提示。

 

命題1:人はより具体的で、より困難・チャレンジングなゴールを設定するほど、モチベーションを高める。(その人の能力に見合った範囲内でなければならない)

命題2:人は、達成した成果について明確なフィードバックがある時、よりモチベーションを高める。

 

以下イメージ図。

 

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 ゴール設定理論の貢献

モチベーションは、具体的でチャレンジングな目標設定と恒常的なフィードバックで、人為的に高められる という事を示した事である。

この示唆は面白い。個人の反省として、チャレンジング度合いはその本人の能力の範囲内でやらないと行けない

感想

具体的・チャレンジングな目標設定→パフォーマンス(成果)→パフォーマンスのフィードバック→さらなる目標設定 という好循環となる。

これはイメージともあう感じですが、個人的に過去も振り返り間違いそうなポイントとして以下かなと。

「設定される目標はその人の能力に 見合った範囲内でなければならない。能力をはるかに超える目標は失敗にしかつながらない。満足度は下がる→モチベーションは下がる。」

 

また、新卒で入社し10年以上勤めていた会社では半期毎に目標設定シートなるものを書かされていたことを思い出す。今思うと当時からこういった理論に基づいて定められたのだろうかと思うが、形骸化しあまりうまく回っていなかった感覚がある。

個人的には、うまくいかないポイントの1つは フィードバックがうまくいかない ということかと感じる。昔と比べて業務内容が均一化したものではなく、猛スピードで変わりゆく中でフィードバックを適切にできるのか?と疑問が湧く。上司や部下が個々の部下を常に評価できるというところが破綻している様に感じる。

またそれは 目標の設定次第 とも捉えられるが、じゃーどうやるのか?というところは、マネージャーも部下も双方とも教育を受けておらず、同じ知識レベルで会話できてなかったのでうまく行かなかったんだろうなと。(こういった経営論の勉強を当時していいればまた違うかったろうにと感じるのでやはり重要だなと)

当時も感じていたが、会社内の様々な施策(上記の人事評価制度もしかり)についてはどの様に考えてやろうとしているか、必要に応じて背景を丁寧に伝え理解してもらう必要があると感じる。

 

理論5:社会認知理論(social connitive theory)1960・70年代〜

 特徴

・先のゴール設定理論がベース

・「目標の高さ」が重要な要素であったが、これに影響を与えるのが 自己効力感(self-efficancy)「自分がある状況において、必要な行動をうまく遂行できるか に対する認知」(簡単にいうと自分の能力への自信)。自己効力感が高い→自分はもっとできると考え高い目標を設定する(矢印a)

・自己効力感が高いと実際の行動・努力の自己管理も徹底する(矢印b)

・この様な人は逆境でも努力を持続できる

・結果、優れた成果を上げやすい。それが正のフィードバックとなり自己効力感が増していく

 

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自己効力感の要素

これだけ重要な自己効力感は何から影響を受けるのか。以下4つ。

・過去の自分の行動成果の認知(mastery of experiences):矢印c

・代理経験(vicarious experience):他社の行動・結果を観察することで、自身の自己効力感が変化する。あいつができるなら俺もできるだろう 感覚。似た者を競わせた際の相乗効果。
・社会的説得:君ならできる!というポジティブな言葉

・生理的状態(physiological factors):精神・生理的不安に陥ると、自分ではこの責務は果たせない という心理につながる

 

感想

陳腐に聞こえるかもしれないが、受験勉強である程度の大学に入ったことについては正直自己効力感につながっていると感じる。これはおそらく受験勉強でなくても良かったのかもしれないが、当時取りうる手段だったんだなと。当時日本の同世代で何かしらの指標である程度の成果を出せたとういことが、今異国の地イギリスでの仕事において窮地に立たされたときにも拠り所になるところである。イギリス人の中に入っても上位10%には入れないけど半分以上くらいにはなれるんじゃなかろうかと。

あと、成果からのフィードバックはひしひしと感じる。昨年度20数名いるヨーロッパ人の同僚の中で上位の成績を出せた事は、それ以降の自己効力感に繋がっていると感じ、またチャレンジしようと思える様になっている。また、今、新たな(自分の中では)チャレンジングな仕事にアサインされている中で思い返すことは、 チームが指名している というアサイン時のマネージャーの言葉や、 何かあればサポートはする という言葉は上記のポイントを満たしていると改めて感じる。

受験勉強に限らず、人生のどこかで何かに熱中してある程度の成果を出し、何かしらそれが関連する事をを続けられる事が重要なのかと思う。

 

理論6:プロソーシャル・モチベーション(PSM: prosocial motivation)2000年代〜

特徴

・他者視点のモチベーション。社会貢献といって大きなものだけでなく、「顧客視点」「取引先の視点」「部下の視点」なども含まれる

・PSM、内発的動機が同時に高いと互いが補完しあって高いパフォーマンスにつながる

・PSM、内発的動機の補完効果が個人の創造性(新奇性、有用性)を高める

 

これからの人材輩出企業の条件(まとめ)

・個人の創造性が重要

・「内発的動機xPSM」が重要

・どういった企業がこの「内発的動機xPSM」の高い人材を生み出せるか?

・18,19章を踏まえると「TFSxSLに満ちた企業」と考えられる。

(SL:チームメンバー全員がそれぞれリーダーの様に振る舞い、互いに影響し合う。

TFL:明確にビジョンを掲げて自社・自組織のしごとの魅力をメンバーに伝え、啓蒙し、新しい事をを奨励し、学習や成長を重視する。)

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長くなった、、、

以上ご参考まで。 

【世界標準の経営理論】18章 リーダーシップの理論

先般の投稿によって世界標準の経営理論について読み進めておるのですが、もくじを見る中でまずは興味を持った第3部ミクロ心理学。今回の投稿では第18章リーダーシップ理論につてまとめられればと。

 

まとめのまとめ

メンバーとの良質な関係性(期待する成果を出し、それに対して期待する報酬・評価を行う事 を達成しうるか)を向上させるため以下はやった方がいい。が、旧式の考え方。

・ メンバーの悩みや課題を聞き出す。(アクティブリスニング)
・ 聞き出した課題に対して自分の考えを押し付けない
・ メンバーへの期待をメンバー自身にシェアする

 

少し高度になると、リーダーの特性ではなくリーダー⇔メンバーの関係性に焦点を当て「明確にビジョンを掲げて自社・組織の仕事の魅力をメンバーに伝え、メンバーを啓蒙し、新しいことを推奨する。同時にメンバーの学習・成長を重視する」といい@TFL(Transformation Leadership)

 

これを更に昇華させ、リーダー一人からメンバーへというハブ&スポーク型のみに留まらず、チームメンバーそれぞれがリーダーを務めるSL(Shared Leadeship)(簡単に言うとメッシュ型)だとよりよい。

 

つまり「チームメンバー全員がビジョンを持ち、全員がリーダーシップを執りながら、互いに啓蒙しあい、知識・意見を交換する」

 

これを実現するには個人が自分のビジョンを持つ必要があり内省が必要

 

とのこと。

 

こういった組織やチームだとパフォーマンスが上がりまっせといういわゆる現在の定石。チームを率いる場合あるいはメンバーである場合でもこういったことを意識するといいのではと。

個人としてできることは自分のビジョンを形づくるための内省。「なぜあなたは働くのですか?」という問いに自分なりにこたえられる状態にしておきたい。

 

リーダーシップの定義とは

バーナード・バス(ニューヨーク州立大学ビンガム校)の定義

Leadership is an interaction between two or more members of a group that often involves structuring or restructuring of the situation and the perceptions and expectations of members.

Leaders are agents of change - person who acts affect other people more than other peoples acts affect on them. Leaders occurs when one group member modifies the motivation or competencies of others in the group.*1

簡単にまとめると

  • リーダーとは他メンバーのモチベーション・能力に「変化・影響」を与える人

ここでのポイントとしてはCEOであったり、マネージャーであったりとリーダーが役職とは一致しないという点。「他社に(いい方向に)変化をもたらす」ということがリーダーである。

5つのリーダーシップ理論

じゃー、そんなリーダーについてどの様な理論があるのか。

研究されてきた時系列で並べられている。

個性(Trait)の理論

時代

1940年代、日本語では「リーダーシップ特性理論」

特徴

リーダーを務めるひとは 他の人と比べて得意でユニークな資質・人格がある という前提に立つ

どの様にリーダーシップが発揮されるか?
  1. リーダーシップ・エマージェンス(leadership emergence)
    役職が決まっていない中で自然発生的にリーダーが決定される
  2. リーダーシップ・エフェクティブネス(leadership effectiveness)
    役職で最初からリーダーが決まっている状況でリーダー⇒部下へ変化をもたらす形
変遷・捉えられ方

じゃー、どういった特徴がリーダーに相応しいのか?という研究が進みいくつか特徴が挙げられるようになったが、科学的にこの特徴を持つ人がリーダーに適しているというコンセンサスには至っていない。

it appeared ... that there were few, if any, universal traits associated with effective leadershipt. *2

が、2000年代に入り下でも説明するTFL (Transformational Leadership)などの考え方が確立され、それと個性の関係が検証され始めている。

その中ではビッグファイブのうち「外交性(extraversion)」がTFLとの相関を持つというメタアナリシス論文*3が出ている。

行動(Behaibior)の理論

時代

1960年代

特徴

行動に着目。代表的な以下の行動スタイルなどがリーダーシップに関わるという考え方

  • 業務重視(task-oriented)
  • 従業員重視(employee-oriented)
  • ルール・役割分担などの業務設計を重視(initiating structure)
  • 部下との友好的な人間関係を重視(consideration)

行動スタイルの分類を行いLBDQ(Leader Behavior Description Questionnaire)が開発され研究が進む。

変遷・捉えられ方

メタアナリシスにて以下がわかっている

  • considerationはフォロワーの満足度やモチベーションにプラスの相関
  • initiating structureはリーダー自身のパフォーマンスにプラスの相関

コンティンジェンシー理論

時代

1960年代半ば、個性、行動の理論の限界がささやかれ始めていた頃

特徴

個性・行動の有効性はその時の条件(contingency)による

(なんとも、そんなこと言ったらなんでも条件次第やがなとか思うてしまいます)

変遷・捉えられ方

条件が多くなる⇒ということは非常に限定された条件でしか適用できない⇒経営学の目的である普遍的な真理から離れる⇒行き詰る

(そらそうやろ、、、と)

1940年代から研究されていた個性、行動がリーダーシップに関係するという考えが行き詰るなか1970, 80年代から台頭してきたのが以下

リーダー・メンバー・エクスチェンジ(LMX)

時代

1960年代半ば~

特徴

リーダー、メンバーの心理的な交換・契約関係(exchange)に着目

これまでの個性、行動はメンバーに対して均一に与えられるという暗黙の了解があったが、その前提は現実的ではなく、誰がリーダーか、誰がメンバーかによって影響は異なる。

(なんかあたりまえやんと今では思うんやけど当時はそうじゃなかったんだろうなと想像、、、)

こういった背景がある中で、リーダー個人から、 リーダーとメンバーの関係性(いかに 良質な関係性:期待する成果を出し、それに対して期待する報酬・評価を行う事 を達成しうるか) に焦点が移ってきた。

 

良質な関係を気づく具体的な行動指針

フィールド実験による実証実験を通じ以下を行うリーダーがメンバーとの良質な関係が得られるという優位な結果が得られている。

  1. メンバーの悩みや課題を聞き出す。(アクティブリスニング)
  2. 聞き出した課題に対して自分の考えを押し付けない
  3. メンバーへの期待をメンバー自身にシェアする

一定の成果はあるもののリーダー⇔メンバー間の心理的な関係だけで成り立つのか?という疑問が出てくる中で以下台頭してきている考えとなる。

 

TSL (Transactional Leadership)、TFL (Transformational Leadership)

時代

1980,90年代

特徴(トランザクショナル・リーダーシップ:TSL)
  1. 状況に応じた報酬(contingent reward)
    成果を上げた部下に、きちんと正当な報酬(評価)を与えること
    メンバーが自身の成果が「きちんと評価されている」と満足すること
  2. 例外的な管理(management by exception)
    "メンバーが成果を上げ続けている限り"、たとえそれが古いやり方でも続けさせ、メンバーへのty苦節的な指示を避けること。

LMXとも共通する。

特徴(トランスフォーメーショナル・リーダーシップ:TFL)

ビジョンと啓蒙 を重視。3つの資質が重要。
まとめると「明確にビジョンを掲げて自社・組織の仕事の魅力をメンバーに伝え、メンバーを啓蒙し、新しいことを推奨する。同時にメンバーの学習・成長を重視する」

  1. カリスマ(charisma)
    企業・組織のビジョンを明確に掲げる。また、それが「いかに魅力的で」「メンバーのビジョンにかなっているか」を伝える。メンバーに対してその組織で働くプライド、忠誠心、敬意を植え付ける
  2. 知的刺激(intellectual simulation)
    メンバーが物事を新しい視点で考えることを推奨。メンバーに意味や問題解決策を深く考えさせてから行動させる。これによりメンバーの知的好奇心を刺激する
  3. 個人重視(individualized consideration)
    メンバーに対してコーチング・教育を行う。メンバー一人ひとり個別に向き合い、学習による成長を重視する

メタアナリシスでは「TFLは組織、メンバーのパフォーマンスのいずれとも正の相関を持つ」ことが確認されている。

シェアード・リーダーシップ(Shared Leadership: SL)

時代

2000年代~

特徴

グループにおける特定の一人がリーダーシップを執る という前提ではなく、時には全員がリーダーシップを執る と考える。水平関係のリーダーシップ。特に「知識ビジネス産業」ににおいて極めて重要とされる。

心理学の社会認識(social identity)プロセスにより「自分がそのグループに属している」という心理的アイデンティティを持てると他メンバーと知識を積極的に交換する。

 

SLが有る⇒社会認識が高まる⇒知の交換が積極的になる

 

現状の結論と感想

ここまでの話をまとめると、「SL x TFL」が最強。

「チームメンバー全員がビジョンを持ち、全員がリーダーシップを執りながら、互いに啓蒙しあい、知識・意見を交換する」

これには、個人がビジョンを持つことが重要であり、真剣に内省(「自分のビジョンな何か」、「自分は何者で、何をしたいのか」)することが求められる。

 

この結論に至ったことは個人的に少し驚きがある。なぜならば、いまから5年以上も前に以下のTEDを見てWHYが重要であるという事を学び、印象に残っていただからである。今再び検索してタイトルを見るとリーダーに関する事じゃないか!?

今思うとこのスピーカーもこの18章の内容がベースにあり話していたんだろうなと改めて理解することができる。

www.ted.com

自分の人生の岐路(イギリスで働く事を決めた際も)でもこのWHYに立ち返り、自分はなにもので、なぜ働くのかを内省して自分なりの答えが出せた時に、今まで抱えて来ていたもやもやが晴れた経験を持つ。

「なぜ働くのか?」という問いはこれからも事あるごとに内省する事だろうと思う。

 

どうぞ良しなに。

ご参考まで。

 

 

 

 

 

 

 

*1:Bass, 1990, p.19-20.

*2:House, R. J. & Aditya, R. N., 1997, p.410.

*3:Bono, J. E. & Judge ,T. A., 2004, vol. 89, p.901-910.

【読書】なるほどっ!ぞくぞくする経営の定石 「世界標準の経営理論」

 

背景

1ヵ月ほど前、ちょうどコロナでロンドン街中のレストランに行けなくなった前後だったと覚えておるが、後輩に勧められた本 「世界標準の経営理論」 をようやく本格的に読み進めておるわけです。

 

遅まきながらMBAも受験しようとアゴスのオンライン講座は受講しているものの日々忙殺される中準備が進んでいない最中でのこの本との出会いである。

その後輩の人柄からすると本当にいい本で勧めてくれたんだと思います。何かを感じながらもなかなか読み進められておりませんでした。後輩曰く「MBA行くよりもこの本で勉強して実践した方が何倍もいい」というニュアンスの事を言っていたと記憶しておりずっと気になってはおりました。

序章を読み進めるにあたり、この本が基本的には世界中の論文を根拠として現時点での経営に関わる分野の 科学的な定石 を整理してくれているという事、そして、経営理論自体は存在せず、 経済学、心理学、社会学 (理論ディシプリン)の組み合わせであるという思想の下、それぞれの分野ごとに章立てカテゴライズされまとまっています。

 

度の章から読んでもいいとういう事だったので、もくじを見ると興味がある分野やタイトルが勢ぞろい。中でも 3部 ミクロ心理学分野 が面白そうなので、そこから読み始めていく。

人に教えるつもりで読書をすると頭に取得率が上がること、自分の理解したことをアウトプットすることでより定着すると言われていることもあり、今後章ごとに勉強した内容や所感をこのブログでもまとめて行こうかと思う。

 

800ページもある大作なので、何かまとめがあれば有用かなと。

どうぞよしなに。

ご参考まで。

 

 

世界標準の経営理論 もくじ 一覧

  • 序 章 経営理論とは何か│いまこそビジネスに経営理論が求められる、3つの理由

【第1部 経済学ディシプリンの経営理論】

  • 第1章SCP理論│「ポーターの戦略」の根底にあるものは何か
  • 第2章 SCP理論をベースにした戦略フレームワーク│ポーターのフレームワークを覚えるよりも大切なこと
  • 第3章 リソース・ベースト・ビュー(RBV)│バーニーの理論をようやく使えるものにしたのは誰か
  • 第4章 SCP対RBV、および競争の型│ポーター vs. バーニー論争に決着はついている
  • 第5章 情報の経済学1│「悪貨が良貨を駆逐する」のはビジネスの本質である
  • 第6章 情報の経済学2(エージェンシー理論)│人が合理的だからこそ、組織の問題は起きる
  • 第7章 取引費用理論(TCE)│100年前も現在も、企業のあり方は「取引コスト」で決まる
  • 第8章 ゲーム理論 1│この世のかなりの部分はゲーム理論で説明できる
  • 第9章 ゲーム理論 2│我々は人を「無償」で信じるか、それとも「合理的な計算」で信じるか
  • 第10章 リアル・オプション理論│不確実性を恐れない状況は、みずからの手でつくり出せる

【第2部 マクロ心理学ディシプリンの経営理論】

  • 第11章 カーネギー学派の企業行動理論(BTF)│経営理論は名経営者の教訓を裏付ける
  • 第12章 知の探索・知の深化の理論1│「両利き」を目指すことこそ、経営の本質である
  • 第13章 知の探索・知の深化の理論2│「両利き」は戦略、組織、人材、経営者のすべてにおいて求められる
  • 第14章 組織の記憶の理論│日本企業が「組織の記憶力」を取り戻す術は何か
  • 第15章 組織の知識創造理論(SECIモデル)│これからの時代こそ、「野中理論」が圧倒的に必要になる
  • 第16章 認知心理学ベースの進化理論│組織の成長は「進化するルーティン」で決まる
  • 第17章 ダイナミック・ケイパビリティ理論│企業が変わる力は組織に宿るのか、個人に宿るのか

【第3部 ミクロ心理学ディシプリンの経営理論】

【第4部 社会学ディシプリンの経営理論】

  • 第24章 エンベデッドネス理論│ソーシャルネットワークの本質はいまも昔も変わらない
  • 第25章 「弱いつながりの強さ」理論│弱いつながりこそが、革新を引き起こす
  • 第26章 ストラクチャル・ホール理論│「越境人材」が世界を変える、そのメカニズムとは
  • 第27章 ソーシャルキャピタル理論│リアルとデジタルのネットワークで働く、真逆の力
  • 第28章 社会学ベースの制度理論│「常識という幻想」に従うか、活用するか、それとも塗り替えるか
  • 第29章 資源依存理論│小企業が大企業を抑え、飛躍する「パワー」のメカニズム
  • 第30章 組織エコロジー理論│変化の時代にこそ不可欠な「超長期」の時間軸
  • 第31章 エコロジーベースの進化理論│生態系の相互作用が、企業進化を加速する
  • 第32章 レッドクイーン理論│競争が激化する世界で、競争すべきは競争相手ではない

【第5部 ビジネス現象と理論のマトリックス】

  • 第33章 戦略とイノベーションと経営理論│近未来に戦略とイノベーションは融合し、理論も重層化する
  • 第34章 組織行動・人事と経営理論│これから人事がさらに面白くなる、5つの背景
  • 第35章 企業ガバナンスと経営理論│あるべきガバナンスを考え抜く時代に、必要な理論は何か
  • 第36章 グローバル経営の理論│「国境」の本質を見直すことが、グローバル経営の未来を映し出す
  • 第37 章 アントレプレナーシップと経営理論│アントレ領域が拡張する未来に、起業家をどう育てるべきか
  • 第38章 企業組織のあり方と経営理論│「5つのドライビングフォース」が示す、未来の企業組織の姿
  • 第39章 ビジネスと経営理論│現代の経営理論はビジネスを説明できない

【第6部 経営理論の組み立て方・実証の仕方】

  • 第40章 経営理論の組み立て方│ロジックの賢人ほど、「人とは何か」を突き詰める
  • 第41 章 世界標準の実証分析│ビジネスの実証分析は想像以上に身近で、とてつもなく深い
  • 終章 経営理論のさらなる視座│経営理論こそが、あなたの思考を解放する