さっとん調査団

日々興味がある事を気ままにアップデートするブログ。IT全般(Azure、AI、機械学習をメイン)、健康、仕事、料理、勉強、読書、イギリス生活、投資ネタなどなど気軽にアップデート

なるほどっ!経営における認知バイアスの防ぎ方

認知バイアス自体の情報は数々の情報を取得することができるが、なかなか解決策について科学的に言及されている情報にたどり着かない。

先般の投稿によって世界標準の経営理論について読み進めておるのですが、この記事では、第20章認知バイアスの理論 内に示唆があったのでまとめる。

個人的には、なぜダイバーシティが声高に謳われているのか、マインドフルネスがもてはやされていのかなども理解でき、いい勉強になりました。

 

F.Y.I.

前章 19章モチベーションの理論 はこちら。

www.satton.info

 

ご参考まで。

人間には認知バイアスが備わっている

人間には認知バイアスが備わっている。そもそも 認知の届く範囲に限界がある というのは物理的に考えても正しい理解。また認知していたとしても(過去の記憶も含む)無意識のうちに自分が優先する情報を認知のフィルターで取捨選択しているというのが認知心理学で証明されている。

個人レベルのバイアス

人間には様々な認知バイアスが備わっているが、経営学で重視される「認知的な評価プロセス(パフォーマンスアプレイザル performance appraisal)」について例を記載する

 

ハロー効果

製品・サービス・他者を評価する際、詳細な分析を行わず、顕著な特徴だけの印象に基づき評価してしまうバイアス。「高学歴だから人格面も優れているに違いない」など。

有名大学から出される技術ライセンシングほど承認が通りやすいという実験結果がある*1

利用可能性バイアス

簡単に想起しやすい情報を優先的に引出し、それに頼ってしまうバイアス。

・想起容易性
記憶時のインパクトが大きい情報。

・検索容易性

記憶の中から即座に検索しやすい情報。スーパーで とりあえず、いつものものを買っておけば間違いがない と判断してしまう

・具体性

身近な人から直接聞いた具体的な情報は、普遍的な代表性があるとは限らないにもかかわらず、優先して取り扱われる

対応バイアス

他者が何かの事件に巻き込まれた際に、その本当の理由は周辺環境などにあるのに、理由をその人の人柄・資質などに帰属させてしまうバイアス。

これは最近でも記憶があり、 会社の役員クラスの人が外出自粛をしているにもかかわらずコロナにかかった といった情報があった際、その人の性格・資質からくる行動特性で何かかかりやすい状況になっていたんじゃないかと自然に思ってしまっていた。まさにこれだなと。。

代表性バイアス

典型例と類似している事項の確率を過大評価しやすいバイアス。

海外でたまたま知り合った日本人が面白かったら関西出身だと考えてしまう。面白い人→関西人 という典型例があり確率が高いと思ってしまう。

 

組織レベルのバイアス

社会アイデンティティ理論

個人の組織への帰属意識のバイアス。

新興国企業が先進国企業を買収する際、 平均よりも16%も高い買収プレミアムを払う という統計がある。 母国を代表して先進国企業を買収している というバイアスが働き、高いプレミアムを払っても完遂させようとしてしまう。

社会分類理論(social categorization theory)

組織のなかで人が他者を無意識にグループ分けする認知バイアス。

人は認知に限界があり、組織があるとグループに分類して認知する傾向がある。自分と同じグループの人に好意的な印象を抱くバイアス(イングループバイアス)がある。

多様性は組織にとってプラス? 多様性(ダイバーシティ) v.s. イングループバイアス

タスク型多様性は以下に分類される。

・タスク型多様性:治験・能力・経験・価値観など。外見に現れにくい。

・デモグラフィー型多様性:性別、国籍、年齢など。目に見えやすい。

以下メタアナリシス*2の結果。

 

結論1:タスク型多様性は組織のプラス

なぜか?組織の成長に必要な新しい発想は「既存の知と知の、新しい組み合わせ」から生まれる。→同書第2部第13章

 

結論2:デモグラフィー型の場合プラスの影響を及ぼさない。場合によってはマイナス。

なぜか?上記イングループバイアスにより軋轢が生じ、交流が滞るため。

グーグルも苦慮するダイバーシティ戦略

グーグルも多様性を重視するが、「イノベーションのためにダイバーシティを進めている」と名言している。これは明らかに上記のタスク型の多様性を求めている。

だが、同時にデモグラフィー型多様性も増してしまうため、スタンフォード大学と研究を行い*3、バイアスを取り除く研修を徹底している。

 

組織的解決方法は経営陣の多様性

アテンションベーストビュー(attention based view)の考え方

アテンションの定義:

noticing, encoding, interpreting and focusing of time and effort," through which people locate some information in their memory and ignore others *4

アテンションとは認知的な気付き、読み取り、解釈、集中であり、それにより人は特定の情報だけ認知し、それ以外を無視する

特徴:

・企業は人の認知の集合体という前提にたつ。

・企業の意思決定・行動は、その意思決定者の限りあるアテンションを企業内のどの諸問題に分配するか、それをどのくらい十分解釈できるかに大きく影響する

・経営者がどの情報に注意を払い、どの情報を軽視するかは認知バイアスにより強く規定される

・認知のバイアスは経営者の取り巻く組織構造・人脈・メンバー編成にも強く規定される

・組織メンバー構成をうまく組めば、自身の認知バイアスをも抑制できる事を示唆する

具体例

ペンシルバニア大学ドナルド・ハンブリック「オーガニゼーション・サイエンス」への発表*5。では経営陣のメンバーの間に多様性(経験・バックグラウンドなど)が高い企業の方が市場の変化に正しく・素早く対応することができた。

→一人ひとりが持つ認知バイアスを解消する一つの有用な手段は、経営メンバーの多様性 という示唆が得られている

認知バイアスを防ぐ示唆

個人の認知バイアスの解消となると「個人が自覚するしかない」といった精神論しか言われないことも多いが、ABVではそれを組織で乗り越える受容性を示唆している

ABVは研究が進められており、アテンション機能がdefault-mode(自分の内面世界を漂う)、salience(違和感にきづく)、executive(言語化やイメージ)がある事が神経科学の研究から明らかになってきている。

これらの機能が脳内で有機的に結びつき、自由に使いこなすことができるほど、創造性が高い という研究結果*6も得られ始めている。

個人の内面からのバイアス克服はマインドフルネス

個人のレベルでバイアスを防ぐ手段として注目されているのがマインドフルネスである。こちらも科学的根拠の確立までは至っていないが、研究が進められている。

マインドフルネスとバイアスの関係

Fundamentally concerned with "being attentive to and aware of what is taking place in the present", mindfulness has been posited to help people become "alive" to the present moment, attuned to their internal processes and state, and healthier, physically and mentally. *7

現在何が起こっているかに注意を向け気づくことに意識を集中させる。マインドフルネスにより今を生き、内面のプロセス・状態を気づき・理解しより身体的・精神的に充実させる。

 

これら定義から、 マインドフルネスの一つの目的は認知バイアスを解消すること とも捉えられる。周囲の環境のその瞬間の状態に意識を傾けること。マインドフルネスが高い人のほうがバイアスなく周りを見渡せるはず というスタンスとのこと。

 

おすすめ瞑想のやり方、参考図書など

個人的にも続けている瞑想などマインドフルネスの鍛錬がバイアスを防ぐいい方法の一つとして上がっているのは非常にいいことかなと。

以下DaiGoさんもおすすめする瞑想のやり方と参考書です。

 

ジョン・カバット・ジン/著

マインドフルネスストレス低減法

 

グーグルのマインドフルネス実践法

サーチ・インサイド・ユアセルフ

 

www.youtube.com

 

 

*1:Sine, W. D. et al., 2003. "The Halo Effect and Technology Licensing: The influence of Institutional Prestige on the Licensing of University Inventions," ManagementSicence, Vol. 49, pp. 478-496.

*2:Joshi, A. & Roh, H. 2009. "The Role of Context in Work Team Diversity Research: A Meta-Analytic Review." Academy of Management Journal, Vol. 52, pp. 599-627. 及び Horwitz, S. K. & Horwitz, I. B. 2007. "The Effects of Team Diversity on Team Outcomes: A meta-Analytic Review of Team Demography, " journal of Management, Vol. 33, pp. 987-1015.

*3:Foloni, R. "Here's the Presentation Google Gives Employees on How to Sport Unconscious Bias at  Work," BUSINESS INSIDER, February 11, 2016.

*4:Ocasio, W. 1997. "Towards an Attention-Based View of the Firm." Strategic Management Journal, Vol. 18, pp. 187-206.

*5:Cho, T.S.&Hambrick, D. C. 2006. "Attention as the Mediator Between Top Management Team Characteristics and Strategic Change: The Case of Airline Deregulation." Organization Science, Vol. 17, pp.417-526.

*6:Beaty,R. E. Et al., 12018, "Robust Prediction of Individual Creative Ability from Brain Functional Connectivity," PNAS, Vol. 115,pp. 1087-1092.

*7:Dane, E.2011. "Paying Attention to Mindfulness and Its Effects on Task Performance in the Workplace," Journal of Management, Vol. 37,pp. 997-1018.