さっとん調査団

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【世界標準の経営理論】18章 リーダーシップの理論

先般の投稿によって世界標準の経営理論について読み進めておるのですが、もくじを見る中でまずは興味を持った第3部ミクロ心理学。今回の投稿では第18章リーダーシップ理論につてまとめられればと。

 

まとめのまとめ

メンバーとの良質な関係性(期待する成果を出し、それに対して期待する報酬・評価を行う事 を達成しうるか)を向上させるため以下はやった方がいい。が、旧式の考え方。

・ メンバーの悩みや課題を聞き出す。(アクティブリスニング)
・ 聞き出した課題に対して自分の考えを押し付けない
・ メンバーへの期待をメンバー自身にシェアする

 

少し高度になると、リーダーの特性ではなくリーダー⇔メンバーの関係性に焦点を当て「明確にビジョンを掲げて自社・組織の仕事の魅力をメンバーに伝え、メンバーを啓蒙し、新しいことを推奨する。同時にメンバーの学習・成長を重視する」といい@TFL(Transformation Leadership)

 

これを更に昇華させ、リーダー一人からメンバーへというハブ&スポーク型のみに留まらず、チームメンバーそれぞれがリーダーを務めるSL(Shared Leadeship)(簡単に言うとメッシュ型)だとよりよい。

 

つまり「チームメンバー全員がビジョンを持ち、全員がリーダーシップを執りながら、互いに啓蒙しあい、知識・意見を交換する」

 

これを実現するには個人が自分のビジョンを持つ必要があり内省が必要

 

とのこと。

 

こういった組織やチームだとパフォーマンスが上がりまっせといういわゆる現在の定石。チームを率いる場合あるいはメンバーである場合でもこういったことを意識するといいのではと。

個人としてできることは自分のビジョンを形づくるための内省。「なぜあなたは働くのですか?」という問いに自分なりにこたえられる状態にしておきたい。

 

リーダーシップの定義とは

バーナード・バス(ニューヨーク州立大学ビンガム校)の定義

Leadership is an interaction between two or more members of a group that often involves structuring or restructuring of the situation and the perceptions and expectations of members.

Leaders are agents of change - person who acts affect other people more than other peoples acts affect on them. Leaders occurs when one group member modifies the motivation or competencies of others in the group.*1

簡単にまとめると

  • リーダーとは他メンバーのモチベーション・能力に「変化・影響」を与える人

ここでのポイントとしてはCEOであったり、マネージャーであったりとリーダーが役職とは一致しないという点。「他社に(いい方向に)変化をもたらす」ということがリーダーである。

5つのリーダーシップ理論

じゃー、そんなリーダーについてどの様な理論があるのか。

研究されてきた時系列で並べられている。

個性(Trait)の理論

時代

1940年代、日本語では「リーダーシップ特性理論」

特徴

リーダーを務めるひとは 他の人と比べて得意でユニークな資質・人格がある という前提に立つ

どの様にリーダーシップが発揮されるか?
  1. リーダーシップ・エマージェンス(leadership emergence)
    役職が決まっていない中で自然発生的にリーダーが決定される
  2. リーダーシップ・エフェクティブネス(leadership effectiveness)
    役職で最初からリーダーが決まっている状況でリーダー⇒部下へ変化をもたらす形
変遷・捉えられ方

じゃー、どういった特徴がリーダーに相応しいのか?という研究が進みいくつか特徴が挙げられるようになったが、科学的にこの特徴を持つ人がリーダーに適しているというコンセンサスには至っていない。

it appeared ... that there were few, if any, universal traits associated with effective leadershipt. *2

が、2000年代に入り下でも説明するTFL (Transformational Leadership)などの考え方が確立され、それと個性の関係が検証され始めている。

その中ではビッグファイブのうち「外交性(extraversion)」がTFLとの相関を持つというメタアナリシス論文*3が出ている。

行動(Behaibior)の理論

時代

1960年代

特徴

行動に着目。代表的な以下の行動スタイルなどがリーダーシップに関わるという考え方

  • 業務重視(task-oriented)
  • 従業員重視(employee-oriented)
  • ルール・役割分担などの業務設計を重視(initiating structure)
  • 部下との友好的な人間関係を重視(consideration)

行動スタイルの分類を行いLBDQ(Leader Behavior Description Questionnaire)が開発され研究が進む。

変遷・捉えられ方

メタアナリシスにて以下がわかっている

  • considerationはフォロワーの満足度やモチベーションにプラスの相関
  • initiating structureはリーダー自身のパフォーマンスにプラスの相関

コンティンジェンシー理論

時代

1960年代半ば、個性、行動の理論の限界がささやかれ始めていた頃

特徴

個性・行動の有効性はその時の条件(contingency)による

(なんとも、そんなこと言ったらなんでも条件次第やがなとか思うてしまいます)

変遷・捉えられ方

条件が多くなる⇒ということは非常に限定された条件でしか適用できない⇒経営学の目的である普遍的な真理から離れる⇒行き詰る

(そらそうやろ、、、と)

1940年代から研究されていた個性、行動がリーダーシップに関係するという考えが行き詰るなか1970, 80年代から台頭してきたのが以下

リーダー・メンバー・エクスチェンジ(LMX)

時代

1960年代半ば~

特徴

リーダー、メンバーの心理的な交換・契約関係(exchange)に着目

これまでの個性、行動はメンバーに対して均一に与えられるという暗黙の了解があったが、その前提は現実的ではなく、誰がリーダーか、誰がメンバーかによって影響は異なる。

(なんかあたりまえやんと今では思うんやけど当時はそうじゃなかったんだろうなと想像、、、)

こういった背景がある中で、リーダー個人から、 リーダーとメンバーの関係性(いかに 良質な関係性:期待する成果を出し、それに対して期待する報酬・評価を行う事 を達成しうるか) に焦点が移ってきた。

 

良質な関係を気づく具体的な行動指針

フィールド実験による実証実験を通じ以下を行うリーダーがメンバーとの良質な関係が得られるという優位な結果が得られている。

  1. メンバーの悩みや課題を聞き出す。(アクティブリスニング)
  2. 聞き出した課題に対して自分の考えを押し付けない
  3. メンバーへの期待をメンバー自身にシェアする

一定の成果はあるもののリーダー⇔メンバー間の心理的な関係だけで成り立つのか?という疑問が出てくる中で以下台頭してきている考えとなる。

 

TSL (Transactional Leadership)、TFL (Transformational Leadership)

時代

1980,90年代

特徴(トランザクショナル・リーダーシップ:TSL)
  1. 状況に応じた報酬(contingent reward)
    成果を上げた部下に、きちんと正当な報酬(評価)を与えること
    メンバーが自身の成果が「きちんと評価されている」と満足すること
  2. 例外的な管理(management by exception)
    "メンバーが成果を上げ続けている限り"、たとえそれが古いやり方でも続けさせ、メンバーへのty苦節的な指示を避けること。

LMXとも共通する。

特徴(トランスフォーメーショナル・リーダーシップ:TFL)

ビジョンと啓蒙 を重視。3つの資質が重要。
まとめると「明確にビジョンを掲げて自社・組織の仕事の魅力をメンバーに伝え、メンバーを啓蒙し、新しいことを推奨する。同時にメンバーの学習・成長を重視する」

  1. カリスマ(charisma)
    企業・組織のビジョンを明確に掲げる。また、それが「いかに魅力的で」「メンバーのビジョンにかなっているか」を伝える。メンバーに対してその組織で働くプライド、忠誠心、敬意を植え付ける
  2. 知的刺激(intellectual simulation)
    メンバーが物事を新しい視点で考えることを推奨。メンバーに意味や問題解決策を深く考えさせてから行動させる。これによりメンバーの知的好奇心を刺激する
  3. 個人重視(individualized consideration)
    メンバーに対してコーチング・教育を行う。メンバー一人ひとり個別に向き合い、学習による成長を重視する

メタアナリシスでは「TFLは組織、メンバーのパフォーマンスのいずれとも正の相関を持つ」ことが確認されている。

シェアード・リーダーシップ(Shared Leadership: SL)

時代

2000年代~

特徴

グループにおける特定の一人がリーダーシップを執る という前提ではなく、時には全員がリーダーシップを執る と考える。水平関係のリーダーシップ。特に「知識ビジネス産業」ににおいて極めて重要とされる。

心理学の社会認識(social identity)プロセスにより「自分がそのグループに属している」という心理的アイデンティティを持てると他メンバーと知識を積極的に交換する。

 

SLが有る⇒社会認識が高まる⇒知の交換が積極的になる

 

現状の結論と感想

ここまでの話をまとめると、「SL x TFL」が最強。

「チームメンバー全員がビジョンを持ち、全員がリーダーシップを執りながら、互いに啓蒙しあい、知識・意見を交換する」

これには、個人がビジョンを持つことが重要であり、真剣に内省(「自分のビジョンな何か」、「自分は何者で、何をしたいのか」)することが求められる。

 

この結論に至ったことは個人的に少し驚きがある。なぜならば、いまから5年以上も前に以下のTEDを見てWHYが重要であるという事を学び、印象に残っていただからである。今再び検索してタイトルを見るとリーダーに関する事じゃないか!?

今思うとこのスピーカーもこの18章の内容がベースにあり話していたんだろうなと改めて理解することができる。

www.ted.com

自分の人生の岐路(イギリスで働く事を決めた際も)でもこのWHYに立ち返り、自分はなにもので、なぜ働くのかを内省して自分なりの答えが出せた時に、今まで抱えて来ていたもやもやが晴れた経験を持つ。

「なぜ働くのか?」という問いはこれからも事あるごとに内省する事だろうと思う。

 

どうぞ良しなに。

ご参考まで。

 

 

 

 

 

 

 

*1:Bass, 1990, p.19-20.

*2:House, R. J. & Aditya, R. N., 1997, p.410.

*3:Bono, J. E. & Judge ,T. A., 2004, vol. 89, p.901-910.